手でイメージすることとプランニング

□プランニングを習熟する困難さはどこにあるのか

与えられた範囲を出題する試験を「言語情報」課題と言います。この場合、与えられた範囲以外からの出題は当然ですがルール違反になります。
逆に「知的技能」課題は、教材にはない問題を教材で学んだ約束事を使って応用が利くのかを問う試験となります。さらに身体による習熟が必要な身体性を伴う試験を「運動技能」課題と言います。

もうおわかりですよね。試験のためのプランニングを習熟するためには、まず建築基準法やバリアフリー法等で規定されたパーツ=「言語情報」を暗記する必要があります。次にそれらのパーツを使って、プランを考え出す「知的技能」が必要です。さらに通常CAD等で行っている作図については、手描きという「運動技能」が必要不可欠となっています。
その3つが重なっているため、学習領域が曖昧模糊となっていて習熟曲線が描けない、というのが実状ではないかと思われます。まずこの3点を分けて克服していくこと。これが製図試験.comが目をつけたプランニングの習熟ポイントになります。
そしてもうひとつ重要なのが、試験でのプランニング「知的技能」をどう考えるかということです。

□試験用のプランニングはクリエイティブではない

製図試験において、エスキースプランニング時点で手が止まる(居つく)原因が、プランニング能力がないためだと考えている受験生は意外に多いようです。多くの受験生は、プランニングはないものを作り出す=クリエイティブな作業だと思い込んでいるからです。
しかし、設計コンペならいざ知らず、4割前後の受験生が合格する製図試験にそのようなクリエイティビティは求められていません。むしろ設計情報を整理し、計画できる引き出しを持っていること=情報整理・管理・表現能力が求められています。
意匠設計を業務で行っている方なら「なるほどね」という話ですが、非意匠設計者からすると、プランニング=クリエイティブな作業であり、無から有を生み出す力が必要という幻想があり、それがプランニングを勝手に難しいモノに変えてしまっています。
しかし製図試験はあくまで「試験」なのです。
そしてそれは前述した3点の「言語情報」「知的技能」「運動技能」を問うという形式にならざるを得ず、さらに「知的技能」を問うということは、「教材にはない問題を教材で学んだ約束事を使って応用が利くのかを問うことに他なりません。
そこから見える試験用のプランニング学習方法は、プラントレース(言語情報の練習)とそのデフォルメ(既存プランの約束事を使って変形プランを作る作業)を、手を止めることなく描ける技術(運動技能)を鍛えるということになります。

□ネックになる作図作業

プランニングの苦手な方は、製図板の前に座るのもあまり気がすすみません。また作図を始めるまでの段取りに時間をかけてしまいがちです。下手な作図でプランニングを練習するのは、本当に気が滅入るのもよくわかります。
しかしよく考えてください。それはプランニングの練習でしょうか、作図の練習でしょうか。あなたはようやく向かった製図板で何の練習をしているのでしょうか。実はここが大きなポイントで、プランニングは苦手だけど、作図大好きという方は少ないんです。それで製図板に向かって作図している場合、実はプランニングへの思考の数十%は作図に使っています。算数の問題を解いている時に文字をきれいに全部定規で書きなさいと言われたら、算数に集中できないようなことが製図板に向かってプランニングしている際に起こっているわけです。これでは短期間の習熟は必然的に難しくなるわけです。

□プランニングイメージができるようになること

そこで製図試験.comでは、プランニングをフリーハンド単線1/200スケールで練ることをおすすめしています。しかも4コマから6コマ程度。これをひたすらトレースして手に覚えさせます。この時、頭と目だけでなく、手に覚えさせることが重要です。覚えるまで描くということです。また1/200スケールの感覚を手に覚えさせることも非常に重要です。
次にこれらの単線プランをデフォルメする練習をします。言語情報から知的技能へのバージョンアップですね。90度回転、180度回転、ミラーリング、スパン変更等があります。
4~6コマを1~3分程度で行います。このタイミングでできるだけ居つかないように描くことを心がけてください。居ついている=まだ覚えていない=言語情報化されていないということです。言語情報化できる部分まで知的技能で補おうとすると、居つきが発生し、手が止まります。
ここまで来るとプランニングする際に、大体のイメージがつくようになります。そしてこの4~6コマ1~3分程度トレーニングをしてない方がほとんどなのです。

□作図訓練法

単線でならプランニングイメージがつくようになったとします。これを作図する際、単線プランと複線定規作図では、作図手順が異なります。ここでまた描くことについて居つきが起こります。実はプランニングイメージはついていても、それを描くイメージができてないからです。そこで定規で描く順でフリーハンド複線プランを1/200で描く練習をします。
つまりフリーハンド単線プラン→フリーハンド複線プラン→定規による作図を行うわけです。このフリーハンド複線プランの手順・段取りができてないため、定規で作図する手順イメージに迷いがあり、その分手が止まる=居つくのです。

□「どんぐり倶楽部」http://reonreon.com の活動がこの学習方法のヒント

文章問題を全て図解して考える学習方法を展開している「どんぐり倶楽部」というグループをFacebookで偶然知りました。「どんぐり」は、「わかるということは、絵に描ける(イメージできる)ということ」「考えるということは、絵を動かす(イメージを変える)ということ」という理論に基づいた学習方法です。
12歳までは糸山泰造氏が作成した物語性のある算数の文章問題を、絵を描きながら解くことで「わかる」「考える」ことを練習することを主としますが、ここでは、文章題等を全て図解して考え、例えば中学生の図形問題でも定規ではなくフリーハンドで図を描く方法で教えています。
民藝運動の河井寛次郎は「手で考え、足で思う」と言いましたが、まさしく手で考える!です。このどんぐりの活動に非常にインスパイアされました。(最後に*補足コラムあり)

□はじめにイメージありき。

私は趣味でギターを弾くのですが、メロディが歌えない(イメージできない)ものは弾くことはできません。同様にプランイメージができないプランは、居ついてしまってすぐには描けないものなのです。
建築業界で最も権威性の高い一級建築士試験がなぜ手描きなのかという点について、あまりにアナログなのかもしれませんが、私自身は、設計における身体性の最後の砦だと思っています。是非、皆さんも手を動かし、手で考え、手がイメージを覚えることで製図試験の合格をめざしていただきたいと願っています。

 


*補足コラム:目を使う、手を使う

(なかなかできる子が少なく、進まないひとつに算数の図形を描く授業がある。略)
原因はただひとつ。目で見て理解していない、考えられていない、ということ。
遊んできていない今の子どもたちには、このような作業は本当に難しい。仮に教え込んでやり方を覚えたとしても、しばらくたつと「どうするんだっけ?なんだっけ?」になってしまうのも見えている。自分の意志で、自分に必要があって、自分で発見したことではないから。
遊んできている子どもたちにとっては「なんでこれができないの?」と当たり前にできることでもある。同じようなこと、例えば「ある場所から一定距離のところに線を引く」ということを、自分の意思でやったことがあるのだと思う。
紙の上で砂場でグラウンドで。場所はどこでもいいんだけれど。子どもにとっては遊びこそが真剣だ。勉強のように「いやいややらされること」や習い事のように「指導者の言うとおりにやること」に比べると遊びというのは自分の意思でやっているのだから。
真剣だからよく見る。
その見たイメージは脳に保存される。
自分の思い通りの結果を出すために、どのように目に見えているものを動かせばいいか考える。イメージを動かす。動かしてみようと思った通りに手を使う。
手というのは、目で見て理解して判断したことを実行する過程で使うものなのだと思う。
だから、手を使えない(この場合は定規の当て方や印のつけかたがわからない)のは、目が使えていないことの結果なのだと思う。そしてなぜ目を使えないかというと、遊んでいないから。
たくさん遊べば遊ぶほど、たくさん試行錯誤する。操作をする。目を使って考える。目を使って考えた結果を手で実行する。思い通りの結果が得られなければまたどうすればいいか(どう操作すればいいか)を、目を使って考える。これらの試行錯誤が全部イメージの操作(動かし方)として記憶されるのだと思う。
遊んでいると賢くなる、学力もつくのはたくさんのたくさんのイメージを脳にストックできるから。参照できるイメージが多いほど、理解ができる。参照できるイメージにたくさんのリンク(特に感情)がくっついているほど、理解は深まる。そして、試行錯誤の経験が多ければ多いほど、ツール、手の動きを伴ったイメージの操作方法を豊富にもっている。だから「自力で考えることができる」のだ。
どんぐり方式の教室をされている方のノートより抜粋

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