chikirinさんのブログで面白い論考があったので一緒に考えてみたいと思います。
「メモるべきはインプットではなくアウトプット」https://bit.ly/2Zd4rtO
読解しながら決めていく受験生
製図試験comで最も気をつけてもらいたいことのひとつに、
読解しながら決めて解いていくということがあります。
受験生A:「え?読解していきながら、どんどん決めていった方がいいやん。」
だからダメなんです。
受験生A:「え?どういうこと? 時間がない中、どんどん決めていかないと変数が多すぎて訳わからないようになるやん」
怖いしね、そんな状態。だから片っ端から、問題文のインプット情報を、アウトプットに変えて決めていきたいのはよくわかる。でもね、それが一番危険な読解方法のひとつなんだよなー。
受験生A:「???」
読解のポイントアップは不要・・・。
製図試験comでは、読解時ESTEP08 まで分析的に問題文をバラバラにして読み解いていきます。そして読解したポイントをまとめて、ESTEP09 で問題文読解の議事録を作ることをやっています。
ところがところが。
受験生には
「ポイントのまとめってもう決まっているのであえて書く必要が無いんですが・・・」
という方が結構多いんです。
え?ちょっと待って、読解している段階で決めているっていうこと?
「読解ってそうじゃないんですか」
・・・・。
読解の基本は、問題文の言いたいことを聞きとること
製図試験における読解の基本は、まず問題文の要求事項を漏らさずまとめ上げる能力です。
一番怖いのは、読解の段階で問題文を読み取りながら自身の意見(=アウトプット)もいれてしまい、問題文が言いたいことなのか自身がやろうとしていることなのかが混在してわからなくなることです。
そうやって読みながら決めていった方が、早く読解できるし当然エスキースも早く終わります。しかし一旦トラブルが起こってしまうと、どの点でそのトラブルが起こったのか判断が非常につきにくくなります。読みながら決めていくとリスクヘッジができないんです。
逆に問題文の話を何も決めずにただただ読解していくだけだと何も決まりませんが、問題文の要求していることしかメモってないので、その要求には間違いがありません。
その代わり、読解するだけで決めない場合時間がかかることがリスクとなります。
具体的に住宅の設計で考えてみよう。
とあるクライアントから住宅の設計依頼があったとします。クライアントは結構イメージ案が抽象的でかつちょっとまだあなたのことを信用していないとします。
あなたは設計受注をしようと思い、クライアントの話を聞きながらドンドン具体的な提案を混ぜてヒアリングし始めています。クライアントも「わぁ素敵、それもいいですね!」と喜んでいる様子。
このヒアリングを元に図面を描いて後日プレゼンしたところ思わぬ自体になりました。
「こんなこと言ってない」「要求していることと違う」「イメージではない」
打ち合わせた議事録を見ると、全部入っているので、議事録のまま作っているんですが、実はこの議事録、あなたの意見=アウトプットでとりまとめられているものだったのです。
どこまでがクライアント=インプットの意見で、どこからがあなたの意見=アウトプットなのかわからないような議事録になっていたのです。
さて、あなたはどうしますか。もう一度ヒアリングからし直ししますか。それともクライアントが言っていただろう内容をまた判断し直して、再度提案しますか。
という話なのです。もうどうしようもない状態です。
もしあなたの判断が的確であれば「1言ったら10のことをやってくれるプロの建築士さん!さすがです!」ということにもなるわけが、外れてしまうと取り返しがつかないことにもなるわけです。
ではヒアリングの際、クライアントの言ったことだけを盛り込んで、全く面白くない住宅の提案をもっていったらどうなるでしょう。それこそ、
「こんなこと言ってない」「要求していることと違う」「イメージではない」
と言われるのがオチですよね。ではどうすれば良いのでしょう。
クライアントとしての製図試験
製図試験というクライアントは、あなたに何を求めているのか、それを整理しましょう。
製図試験では、「クライアントの要望通りのファーストプランを起こす能力」が求められています。
「クライアントの意図を先読みして、様々な提案を入れたり、忖度したり、気の利いたことを入れる前に、クライアントが要望していることをまず打合せしたままの今後の議論の土台としてファーストプランを起こすという試験なのです。
事務所から車で2時間くらいのとある町に朝から出て、11時くらいから打合せ。1時間30分くらい掛けてヒアリングし、30分程度でプランにまとめ、その要点を1時間くらいでまとめ、3時間くらいで作図する。モレがないか30分チェックして、夕方には再度クライアントにその図面と要点を手渡すようなイメージです。
クライアントは、
「なるほど、私が思っていたのはこんな変なゾーニングだったのか。アプローチはこっちになるんだ、リビングは打合せの時は10m2って要望したけど、倍の20m2ある方がいいよね。後日修正してもらえますか。」
「しかし、まあ、あれだけいろんな要望を出したのに、全部正確に入っているってすごいですね、さすが一級建築士です」
という感じであなたのプランをみるイメージです。
あなた:「本当は、最初からリビングを20m2で提案したかったのですが、そうするとキッチンが狭くなるため、一旦は、クライアントの意思を尊重してファーストプランとしました。これからは具体的にプランを提案させていただきますね!」
このクライアントという名前の製図試験の正体がわかると、この試験は非常に対策が立てやすいことがわかります。まずは聴く力、そしてその指示したことを再現できる能力を求めているということです。
わざと決めずに提案を待つ(h28等)タイプの年度もありますが、できうる限り提案は最小限とします。国土交通省が求めている一級建築士への職能は、独りよがりな独創的なアーティストではなく、普通のことが普通にこなせる技術者なのです。
それ以上でもそれ以下でもなく。
結論
そもそも「メモるべきはインプットではなくアウトプット」なのかがこの始まりでした。https://bit.ly/2Zd4rtO
私の結論としては、アウトプットはメモってもよいが、要求されているのは、インプット(=読解)情報を建築に再現する、空間化する能力であるということ、です。
なのでアウトプット(=ご自身の判断や意見、提案)は、雲マークにするとか、色を変えるとかして、重要なんだけど、できるだけ混ぜないで読解することが重要だということになります。
具体的には、例えばh30の敷地を読んで、
「セオリーとしては東側入り」が敷地条件ですが、
「でもその場合、一体的利用と矛盾するのはどう考えればいいんだろう、西入かも」があなたが行うべきアウトプットになります。
そしてそれらをエスキース時までは、決めずにデータ化していきます。それらを総合して、西入が一体的利用にはより望ましいという結論をもって、エスキースしていけばよいと思います。
ちょっと長くなりましたが、インスパイアさせていただいたchikirinさんに感謝。
chikirinの日記 https://chikirin.hatenablog.com