ランク4が48.0%、ランク1が26.6%という歴史的な合格率となったR06「大学」の再現図とランクとの関係性をまとめます。サンプルがそれほど多いわけではなく、定性的な内容となりますが、所感として文章で残しておきます。
アルナシ・法規・数字は必須
・要求室抜け、指定された造作抜け、指定された記述抜けは、厳しく採点されています。
・防火区画、延焼ライン、道路斜線、2方向避難、建築基準法違反も厳しく採点されています。
・面積表や各室面積がどこまできびく観られていたかについてはサンプルが少なく不明です。
・高さ方向について、階段の段数云々について標準解答例から不合格要因としていますが、これについても真偽
の程は再現図からは不明でしたが、講堂の段床及び天井高さ指定のあった製図室に絡むレベル差については、厳しく採点されていると考えられます。
例年にはなく、厳しく観られたポイントと考えられるもの
・免震基礎
免震基礎はh27 以来の出題でかつ今回は指定されていなかったため、ミスしても減点で済むと思っていましたが、
かなり厳しく、不合格者が続出しております。
特に平面図と断面図での描き方ミスは顕著に不合格になっています。


免震基礎上の駐車場スペースもかなり厳しく減点されていた模様です。
車が壊れるほどの大地震であるなら、そもそも免震基礎自体も相当なダメージがあるはずであり、免震基礎上の駐車場で大きな減点はないはず、と考えていたのですが予想以上に厳しかったです。

また平面図上に、免震基礎の点線表記が抜けている答案や、免震基礎クリアランスが敷地境界から3m確保できていない答案も不合格となっていました。

・講堂
講堂のレイアウトはプランも含めて観られているようで、レベル差、座席数、面積、レイアウト、形状まで大きく減点
もしくは不合格要因となっていると思われます。
用途不明な空間は厳しく採点されており、不明な講堂後部の空間が不合格要因になった可能性大です。

面積席数形状が要求に達していないプラン


・道路斜線
道路斜線については、1:1.5 の角度、計算、線の引き間違いまで、おそらくテンプレート的なモノで測って合致しない答案は不合格にさせられていると思われます。
この事例では、1:1.5と描いていながら、斜線表現が1:2となっていました。

以上の3 点あたりが、例年とは異なり厳しく観られたポイントであり、合否判断が的確でなかった原因となりました。
弊社採点において、この予想がつかなかったため、合否判断で受講生にはご迷惑をおかけしました。この場を借り
てお詫び申し上げます。
その他、気をつけておきたいポイント
・利用者アプローチが不明なプラン
どこまで厳しく観られているかは不明ですが、東側からの車椅子利用者用アプローチは必須と考えられ、その点において、減点が大きかったのではないかと思われます。

・高さ方向の表現が曖昧な断面図
階段の段数を含め、高さ方向の表現は齟齬がないようにしなくてはいけないのですが、廊下も製図室も同じ高さで表現されながら、廊下は2800、製図室は3000と表記されており、高さ方向の辻褄が合っていない状態でした。

・辻褄の合わない1.5回転階段
いわゆる1.5回転階段の場合、階段への出入口は左右交互にくるわけですが、その部分にEPSが配置されており、階段として成立していない表現になっていました。

・指定されたレイアウトが抜けている答案
今回、講堂と図書室はレイアウトを描くことが求められていました。逆に教室や会議室には求められていませんでした。
要求されたレイアウトを過不足なく描く。
これが基本中の基本となります。

・問われていることに答えていない計画の要点回答は不可
問(1)はいわば作文能力として、問われていることに的確に答えるという設問でしたが、それに呼応していない答案が散見されました。

2025(R07) 本年度対策
全てミスがないようにしようとすることで、大局を見失ってしまう可能性があるため、弊社では、大枠を守り、減点項目をできるだけ少なくして、完成していることが合格の条件というように指導してきました。しかし残念ながら「減点項目はほぼ皆無にする」ということが合格への至上命題と転換したと位置づけ直す必要があると考えます。
また年々増える作図量に対応することは必須条件となっています。
その代わりにプランニングへの過度な負担はなくなり平易になっています。
「平易だがノーミス」で作図量の多い試験と変貌しているわけですから、これに対しては、SPI 試験やフラッシュ暗算
のような、時間を区切って素早く正確に行う反復練習が最も効果的であると結論付けました。
本年度は、その方針で短いタイムスパンで平易な練習を行うことが必要不可欠です。