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読んでいるつもり症候群の正体
「ちゃんと読んだはずなのに指示を落としてしまいました」。これは反省会で耳にタコができるほど聞かれる嘆きです。原因は単純で、読んでいないのではなく、“読んだつもり”になっていることに尽きます。
脳は省エネ装置であるため、既知の文脈を見つけると「ここは理解済みだ」と自動で判断し、細部の情報を刈り取ってしまいます。
設計条件の“留意事項”や“要求図書”など、見慣れた単語が並ぶ場面こそがまさに地雷原です。
対策としては、自分が常に誤読しているという前提を持って読む姿勢を保つことが重要です。
「無知の知」を認め、毎行「今、私は読み飛ばしていないか?」と自問する“内なる審査員”を設けてください。
読み終えるたびに、小声で「今の私は合格か?」とツッコミを入れるような“セルフコール”も効果的です。
余談ですが、製図試験comではこれを「疑い深い大阪の姑のように」と呼ぶこともあります。
どんな説明にも「それホンマなん?」とツッコミを入れる、意地悪い姑を脳内に召喚していただきたいんです。
超ダブルバインドという思考筋トレ
「慌てるな! 急げ!」──一見すると矛盾しているこのような指示を同時に満たす境地を、私は「超ダブルバインド」と名付けました。
通常のダブルバインドとは、左足を出すと「右足を出せ」と言われ、右を出すと「左だろ」と怒鳴られるような理不尽な罠です。
しかし、超ダブルバインドは自ら矛盾を背負い、その張力によって思考を鍛える“セルフ拷問器具”です。
例1:静かに素早く線を引く
製図板の上では、穏やかな湖面のように滑らかな筆致を保ちつつ、タイムキーパーの秒針よりも速く進行します。
例2:疑うように信じる
自分の読解を常に疑い続けながら、最終的には「自分が描いた図面が世界で一番だ」と信じ切るのです。
このような反復によって、「頭は冷静、手は猛スピード」というハイブリッド型の“脳筋”が育っていきます。
メンタルと客観性を両立させる技術
読解のステップを“実況中継”しながらペンを動かすことで、客観視と自己信頼を同居させることができます。
たとえば、目で拾ったキーワードを声に出してみてください(例:「道路斜線の検証…了解!」)。
声が鼓膜を震わせることで、「本当に確認した」という事実を身体に刻むことができます。
そして、即座に「ホンマか?」とセルフ審査員(姑)が再確認を行います。
この“三位一体ループ”によって、「読んだつもり」を物理的に封じることができるのではないでしょうか。
周囲の受験生に怪訝な目で見られのは必定なので、試験当日は身振り手振りと心の中でやるようにしましょう。
スタジオからの実況:試験当日のワンシーン
試験会場を実況席に見立ててみましょう。
実況アナウンサー「受験番号◯◯◯番、ただいま問題文の「敷地及び周辺条件」“道路斜線”を読解しています!」
解説者(あなた)「ここで“2Aかつ35m”の確認をし忘れているようです。おっと、ペンが止まりました。セルフ審査員が赤旗を上げた模様です!」
このようなノリで脳内放送を流し続けることで、単調になりがちな読解作業がエンタメ化され、集中力の燃費も飛躍的に向上します。
何よりも、読み飛ばしが発生した瞬間に“放送事故”として即座に発見できるのではないでしょうか。
まとめと次への一歩
問題文の読み飛ばしを撲滅する鍵は、
- 読んだつもり症候群を自覚すること
- 超ダブルバインドで思考筋を鍛えること
- 実況ループで客観性とメンタルを同居させること
この三段構えを提案します。
「私はまだ読み飛ばしているかもしれない」。その健全な疑いと、「最後は絶対に描き切る」という狂信的な自己肯定の両輪で、合格ラインを見事に突破するイメージを持ちましょう。
次回の製図練習では、問題文を読み上げながらタイマーを回し、“静かにでも素早く”ペンを走らせることから始めてみてください。