一級建築士設計製図試験において問題文の読解は最重要です。
問題文の読み飛ばしから読みぬく力を身につけるために、今回も私の師匠の一人である内田樹さんのテキストから引用してまとめ直しました。
なぜ「読み忘れ・読み」が起きるのか?
推論① 設計意図よりも答え探し優先してしまい、解答を決めてしまいたい気持ちが強すぎる。
推論② 情報を単に処理しようとすると表や数字だけに目が行き、文脈を読まない。
推論③ 「読み返す習慣」がないため、初見で理解した気になり、誤読に気づかない。
推論④ 曖昧な表現を飛ばしてスピード重視する余り、「理解できない文」を無視している。
問題文読解のアプローチ
① 主体として読む:読むのは「自分の意志」
問題文は「押し付けられる」ものではなく、「読み取るべき問い」である。
試験作成サイドが何を「ミスさせたいのか」を読み取る。
ただ条件をなぞるのでなく、「なぜこの設定なのか?」を考える。
→トレーニング方法:「この文は、設計者に何を促している?」と1文ごとに問い返す
② 「答えを探す」から「問いに応じる」へ
読むとは“意味との格闘”。すぐに答えに向かうな。
与条件を空間の起点として読む。「どう配置すればいいか?」ではなく「なぜこの施設が求められているか?」を想像すること。条件文を「項目」として処理するのではなく、「ストーリー」として読んでみてはどうか。
→トレーニング:「物語として問題文を要約」してみる
(例:「駅前の大学施設が地域に貢献するために…」)
③ 意味の「摩擦」を大切にする
「わからない」は成長の入口。「今は飛ばさずに立ち止まれ」。意味が取りにくい文、抽象的な表現は特に重要。
模範解答とずれる原因は、実はこの“よくわからなかった一文”だったりする。
→トレーニング:「理解しにくい文だけ」集めて読み返し、他人と解釈を比べる
④ 「構造」を読む:文と文の関係を見る
読むとは「線」ではなく「面」を把握すること。因果関係、対比、条件と制約、例示など、文と文がどう連動しているかを意識し、「前提」「目的」「制限」のセットで理解すること。
→トレーニング:与条件を構造チャート化する(例:ゾーニング条件/動線制約/要求)
⑤ 問題文の語調・文体を「真似る」
設計とは「読み返すこと」から始まる。書き手になりきって問題文を読んでみよう。
試験委員の「語り口」に耳を傾けると、重要度や優先度が見えてくる。
単なる指示文ではなく、依頼文としての空気感を読むこと。
→トレーニング:「問題文を、設計依頼としてクライアントを代弁してみると?」と考えて音読してみる
実践ワーク:与条件読解の“意味”トレーニング
過去問の問題文から、「わかりにくい一文」を5つピックアップ
それぞれについて
- 「どういう意図の文か?」
- 「計画にどう影響するか?」
- 「なぜこの表現が選ばれているのか?」
を書き出して、グループで共有し、「読み違いの可能性」を議論
読むとは「建築設計の一部」である
内田樹氏が言うように、読むとは、相手に自分を明け渡す行為。
一級建築士試験の問題文は、単なる指示ではなく、「合否の哲学」が埋め込まれたテキストです。
「どう設計するか」は「どう読むか」で決まる。
読解力を身につけることが合格へのの出発点です。様々な学びにトライしていきましょう。