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2023「図書館」本試験総評 by 製図試験com 山口 達也

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2023年度「図書館」総評
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出題総評:非常に悪意と憎悪に満ちた完成度の高い出題

減点法でなおかつ不満も出ない上で、採点が平易な出題がなされたと感じています。ここまで試験は劣化しつつ、悪意と憎悪に満ちた、しかし完成度の高い出題だったと感じました。

この出題で不合格要因を踏んでしまった方は、悔しいけど出直しせざるを得ず、残念ですが学習不足だったと考えてよいでしょう。あなた以上に試験作成サイドは上手だったということです。これほどまで受験生を愚弄する試験課題もみたことがありませんし、その上でよく練られている出題でした。

□初出題1:北側斜線制限

まず、方位がいつもの北ではなく「真北」になっていたことにどれだけの受験生が、気がついていたでしょうか。第二種中高層住居専用地域での北側斜線は初めての出題であり、製図試験comは最最終課題で予測はしたものの、10m+1.25勾配で一切の緩和なしという条件を理解していた方がどの程度いるのか。建築の諸先輩方々と話していても、そもそも住居専用地域に建てられるとはいえ、図書館を計画するとかあり得ないよなーと感想を述べられていました。もう試験のための設定でしかないと言ってもよいでしょう。

□初出題2:要点での屋上設備レイアウト

屋上設備について、はと小屋からケーブルラックを通じて各設備機器へのレイアウトが求められました。これまで各設備シャフトと屋上機器の接続を教えてはいない資格学校が多い中での突然の出題でした。製図試験comでも前半戦で一度電気設備のルートについての解説をした程度で全くブラインドでしたが、あえて言えば、多くの受験生は描くことができず、これは時間を拘束するための出題だったと思われます。

□初出題3:必要な共用部門、管理部門を要求室に掲載しない出題

これは徹底的に動線図を描いていた製図試験comへのポイント問題のような出題でした。要求室にないものは想定の上設けてよいということで、エントランスホール、各階便所、そして管理部門全般を設けることで施設の機能を押さえるという良問であったと思います。

しかし残念ながら、かなりの割合で、弊社コース生もできていなかったことに少なからずショックを受けています。これは図書館の動線とゾーニングがわかっている受験生とわかっていない受験生を分けるボーナス問題であったからです。なぜここができていなかったのかは今後の分析が必要です。

□初出題4:ほとんどの要求室が〇〇m2以上

書籍数が与えられて、その上で要求室面積が〇〇m2以上であったこと。これは例えば一般開架スペースが600m2以上という出題の場合、書籍数5万冊=200冊/m2×250m2という一般的な計算式を導入してよいのか、はたまた実際計算しなくてはならないのかを迷った方が多いかと思います。600m2では面積が足りないのではないかという疑念を持った方も多かったのではないでしょうか。

いずれにせよ、かなりフリーな出題であったことは間違いなく、これで明らかに時間を費やした受験生も多かったのではないかと予想されます。

□初出題5:高天井

3.7m以上の高天井を200m2以上設け、その範囲を明示する・・・。3.7mが絶妙でしたね。吹抜けにするのか、階高さを5m超えにするのか迷わす出題でした。

合否ポイントイメージ

まだ再現図を添削していないので全体の感じはわかりませんが、強いて言うと、アルナシ・数字・法規で不合格の山を積み上げるしくみの試験としては、よくできていて、断面図を観れば合否がわかるようになっているかと思います。延焼ラインの引き間違いが不合格になるがごとく、北側斜線、南側道路斜線で塔屋が1/8を超えているために斜線が抵触すること、そして斜線の引き方間違いを含め、断面図だけでおそらく1/3は不合格になるのではないかと思います。

次に試験作成サイドとして作った不合格ポイントについて、それを踏んでいるけれども合格にするのはかなり難しい選択になると思われ、満を持して出題した初出題3:エントランスホール・便所と管理部門抜けに関しては厳しく採点するのではないかと思われます。

また初出題4の〇〇m2以上については、1室でも以上を確保していない場合は失格にする可能性があります。

一方、時間稼ぎ的な出題である項目が多い要点や、蔵書数計算が必要になるような点については、よほどひどい内容でない限り、そのレベルに至るまでに合否は判定されると思われます。

今後の学習対策

□基本となる建築計画の把握

大枠としての動線・ゾーニングから建築計画全体を把握していく力、4つの指標外部と内部の動線と面積がコントロールできれば、その部分では平易であったと思われます。逆に動線図を描かずにプランをしていた方にとっては、何室をどう付加すればいいのかイメージすらつかなかった可能性もあります。

そういう意味で骨太な建築計画の理解が不可欠であり、そこをついた良問でした。

□はと小屋まで問ういびつな出題

一体この製図試験は、基本計画なのか、基本設計なのか、実施設計なのか。はと小屋まで問うのであれば、引き込み柱や、最終会所まで問うべきであり、非常に出題にアンバランスさを感じます。ということで対策としては、やはり設計図書一式の図面(一式図)をもって学ぶ必要があると思います。つまり3000m2級の設計図書一式を理解しないともう回答できないのではないか、ということと共に、この製図試験の機会に一式図から学びなおすカリキュラムが必要ではないかと感じています。

□さらにアルナシ・数字・法規は必須

減点法の試験制度としては、さらにアルナシ・数字・法規へのチェック能力は必須であると考えられます。来期に向け、製図試験comでは全く新しい方法で、このチェック能力を高めるしくみに取り組む所存です。

□試験を超えてもっと建築に興味を持とう

総評したように非常に悪意に満ちた試験でしたが、これが今後も変わることはありません。そしてアルナシ・数字・法規というシラミツブシのような状況も変わらないでしょう。ですが、そんなことだけに足元をすくわれていては、私たちの生命力自体がそがれてしまいます。もっと建築は面白く、楽しく、奥行きのあるものです。そのバランスを捉え、アルナシ・数字・法規は押さえたうえで、もっと建築自体に興味が持てるプログラムを考えていくべきではないかと改めて決意した次第です。

弊社解答例はメンバーズサイトにアップするとともに、再現図をお送りいただいた方にはエスキースを含めお送りします。
皆さんの再現図が集まり次第、より細やかな傾向性を分析できるかと思いますので、ぜひ再現図に挑戦してください。

2023年10月11日

製図試験com 山口 達也

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