講師:山口の所感
これまで出題されたことのない学校建築。小学校も中学校も高校も飛び越して「大学」ですか。しかも少子化で人口減、大学がこれから定員割れで余っていくという状況での「大学」という出題となりました。
資格学校も全くこれは予想外ですし、過去問題もありませんから、私たちとしては、調べなければならないことが多いのですが、非常に戦いやすい課題であると感じました。
課題分析から、学習ポイント、出題予想、そして恐らくどこよりも早い公開課題をアップしました。
また動画解説も行いますが、それは7月30日を予定しています。
発表された課題内容
令和6年一級建築士試験「設計製図の試験」の課題
「大学」
要求図書(1/200)
1階平面図・配置図、各階平面図(※階数は問題中で指定)、断面図、面積表、計画の要点等
建築物の計画に当たっての留意事項
・敷地の周辺環境に配慮して計画する。
・バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。
・各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
◯大地震等の自然災害が発生した際に、建築物の機能が維持できる構造計画(初出)とする。
・建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
・構造種別に応じて架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する。
・空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。
注意事項
「試験問題」及び上記の「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に理解したうえで、「設計製図の試験」に臨むようにしてください。なお、建築基準法等の関係法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不適合又は不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。
俯瞰して「大学」を考える
今日的「大学」の社会的意義・使命
製図試験としては、大学そのものもさることながら、その社会的な意義や地域との関わりが重要になってくると考えています。コミュニティ・エンゲージメントの推進、教育プログラムを通じた地域貢献、そして施設の地域開放がポイントになるのではないかと考えられます。
型:都心回帰型か総合キャンパス型
出題される型としては、首都圏東京で観られるいわゆる駅近大学と言われる都心回帰型大学か、ちょっと郊外での総合キャンパス型の一部が考えられます。
敷地:市街地か郊外
上記の型によって、市街地(特に駅チカ)なのか、郊外なのかという選択肢で求められる施設像が異なります。
キャンパス内での位置付:単独かキャンパスの一部
駅近大学の場合は、単科大学であったり、一学科校舎だったりします。郊外キャンパスの場合は、キャンパス内の一部となります。
建築物:2平面で2階建、3平面で3階建、基準階型、4平面は可能性のみ
出題パターンとしては、
- 2平面、2階建て
- 3平面、3階建て
- 3平面、基準階型(4-7階建て・1階基準階最上階)
- 4平面、1/2/3階+基準階
の4パターンがあり念の為すべてやっておく必要があると思われます。
利用用途:単科大学、大学院、研究棟、大学棟の一部、
利用用途としては、単独で成立する建築物として、単科大学や大学院、研究棟等が考えられます。もしくは大きなキャンパスの一部の棟の建替えもしくは新設が考えられます。
「大学」という課題の特殊性
◆初出題であるため、実物以外の参照物がないこと
今回の「大学」は初出題で、類例を過去問題から見つけることはできません。実物以外に参照物がないことは非常にこれまでにない特徴です。加えて、大学に行ったことがない方は、その感じがつかみにくいと思うので、是非「オープンキャンパス」に参加してください。
◆利用者がとりあえず大学生に限定されている校舎建築であること
大学の利用者は、原則大学生に限定されています。そのうえで、いろんなプレイヤーがいます。教授、非常勤講師、施設管理者、運営管理者、等です。
◆その上で生涯学習や一般利用を含めた公開性が求められていること
その上で、一般利用者を含めた地域への公開性が求められています。その動線とセキュリティの確保がプラン上は大きなテーマになるはずです。
◆管理部門は施設規模想定でかなり異なる
全キャンパス内に事務管理棟があってその中の一部の建物なのか、単独施設なのかで、管理部門のボリュームや構成は変わってきます。そのあたりは問題文に指示があるはずですが、ポイントとして押さえておきたいところです。
◆講義室部分は基準階型に当てはめる分、階数無指定が可能
令和4年の事務所ビルでは、階数未指定という課題が出題されました。「大学」も同様な出題方法が可能です。このあたりはちょっと手順と方法を積み上げておく必要があるでしょう。
注意すべきその他の部分
□法規:特建08110に当たる。50m2以上の講義室はch=3m以上、5階建以上は避難階段程度、令19-7より1/10採光
法86条:大学キャンパス開発において、一団地認定により設計の自由度を高め、土地の有効利用が可能
□構造:純ラーメン程度
□設備:空調は全館単一ダクト方式・各階単一ダクト方式・個別空調のいずれか
□省エネ・再エネ:ZEB参照
学習攻略ポイント
1)出題されるであろう「大学」の雛形
上記分析に基づき、製図試験というA2用紙に6時間30分で表現可能な「大学」という課題はかなり限定的になります。つまり出題される「大学」の雛形があるということです。
まずそれを押さえてしまえば、大きくブレることはなくなるでしょう。
2)「大学」の空間構成
「大学」の空間構成要素はかなり限定されています。ですので構成を理解すれば、大体どのあたりを問題としてくるのかはある程度予想が可能です。
3)人の(大学生・学外利用者・教授・非常勤・大学管理・施設管理)動線と要求室
空間構成を考えるうえで、人=プレーヤーの動線とその機能を充足させるための要求室を考えることは、建築設計の基本中の基本です。利用者・管理者視点で動線と要求室を考えていくことが本質的理解には不可欠です。
4)講義室を含む校舎建築の雛形
初出の「校舎建築」ですが、建築計画で小学校の計画を学んでいるかと思います。校舎建築には雛形性が高く、それほど多いプラン選択はありません。そのあたりの基本を固めておけば、突拍子もないプランになることはありません。
5)講義室を含め、テーブル・イスのレイアウト関連
大学によってことなりますが、40名/50m2が一つの単位になり、そのための講義室とレイアウトは必須となります。どんな要求でもレイアウトで手が止まらないようにパーツをストックしておくことが重要です。
6)「大学」に関わる要点
「大学」の要点については、初出なので非常に問題が予想しにくい=実力が問われる可能性が高いです。
この部分については、弊社はAI導入して解説してまいります。
予想問題
これらの分析から、7月26日18時の段階で予想される問題のタイプのみアップします。予想屋ではありませんが、この方向性に出題可能性を感じています。まぁファーストインプレッションですから、そういう感じなのかなぁくらいでご覧いただければと思います。
A:駅近立地の基準階型大学
1-2階は公開性の高いカフェや多目的ホール、コンビニまであるような事務所ビル的な構成で、3-7階が講義室関連となるため、各階に講義室とゼミ室があるのがちょっと微妙。もしかすると4平面になるか2階がゼミ部門になるかというとことでしょうか。法規及び既存の都市インフラ(ペデストリアンデッキやレベル差)等も要注意。
→参照:h20「フィットネスクラブとビジネスホテルからなる複合施設」
B:キャンパス内の校舎建替え
全キャンパス内での位置付けが非常に重要になるタイプの課題で、h30の小学校の屋外プールを建て替えてスポーツ施設にした課題が雛形イメージとなりますが、基準階型での計画ではないかと思われます。
→参照:h30「屋内プールのあるスポーツ施設」
C:郊外型研究施設
郊外に建てる研究施設を持って「大学」と呼ぶのか、というのは非常に疑問なのですが、いわゆる単独の大学研究施設として、中庭2階建て環境取込型の立地な施設イメージ。(でもこれ大学じゃなくて、研究施設ですよね・・・。)まぁバリエーションとして怖いので一度はやっておきたいタイプです。
以上、7月26日18時「大学」についての課題分析でした。
製図試験com代表 山口 達也
上記まとめPDF
240730公開キックオフミーティング
オープン課題(ver.240728)
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