講師:山口の所感
本年度も階数が不明な出題となりました。また庁舎なので昨年にも増して免震基礎必須かと思われます。また庁舎は公共施設ですが、住民のコミュニティセンター+公務員のオフィスビル+議員のセキュリティオフィスでもあり、R04、R06の要素を取り入れた出題になると予想しました。
更にZEB要素、防災拠点要素も必須であり、必要要素が全部入ったまちのランドマーク・フラグシップになるような施設を想定しておきましょう。いやー、こんな年度の課題で合格するのは気持ちいいですね!
こんな条件でどんなひどい出題をするつもりなのでしょう、今から本試験が楽しみです。
発表された課題内容
令和7年一級建築士試験「設計製図の試験」の課題
「庁舎」
要求図書(1/200)
1階平面図・配置図、各階平面図(※階数は問題中で指定)、断面図、面積表、計画の要点等
建築物の計画に当たっての留意事項
- 敷地の周辺環境に配慮して計画する。
- バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。
- 各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
- 大地震等の自然災害が発生した際に、建築物の機能が維持できる構造計画とする。
- 建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
- 構造種別に応じて架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する。
- 空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。
昨年度と同様。
注意事項
「試験問題」及び上記の「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に理解したうえで、「設計製図の試験」に臨むようにしてください。なお、建築基準法等の関係法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不適合又は不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。
俯瞰して「庁舎」を考える
今日的「庁舎」の社会的意義・使命
製図試験としては、庁舎そのものの社会的な意義や地域との関わりが重要になってくると考えています。
庁舎については、災害対応・ワンストップ窓口・多様性・環境性・効率性等の背景があり、高度成長期時期から60年経っていることから、建て替え需要があります。一方で予算の問題からコンバージョンや増築のみという対応もあり、出題タイミングとしては、社会性をもっている好出題と感じました。
部門:庁舎機能にどの部門・機能を配置するのか
庁舎は、公務員及び議員によるオフィスビルであり、かつ住民サービスを行う窓口業務があります。
基本としては、住民サービス部門・執務部門(総務・政策・福祉・建設・危機管理)・議会部門・共用その他部門があります。さらに図書館・市民ホールやカフェといった利用者サービス、子育て支援センターや教育委員会、上下水道局といった執務機能を複合することもありえます。
立地:本館建て替えor別館新築
1,000㎡で6階建てとすると、大体5,000㎡程度が製図試験で出題される最大面積になるのではないかと思われます。人口1万人あたり 1,000〜1,500㎡であることを考えると、建て替えとする場合、人口3-5万人程度の自治体(全国で10%程度)となるため、より大きな規模の自治体を対象として考えると、本館建て替えではなく、別館というケースも考えておいたほうがよく、双方で部門構成要素は大きく変わります。
本館建て替えが本命ですが、別館も視野に入れておいたほうがよいでしょう。
建築物:2平面で2階建、3平面で3階建、基準階型、4平面は可能性のみ
出題パターンとしては、
- 2平面、2階建て
- 3平面、3階建て
- 3平面、基準階型(4-7階建て・1階基準階最上階)
- 4平面、1/2/3階+基準階
の4パターンがあり、本命は3平面基準階型と思われますが、念の為すべてやっておく必要があると思われます。
付加機能:免震基礎・ZEB
これから建設される庁舎は多くの場合、防災拠点となるはずですから、今年も免震基礎は必須になると考えられます。
注意すべきその他の部分
□法規:特に庁舎だからというものはありませんが、第1種中高層住居専用地域、第2守中高層住居専用地域にも建設可能なので北側斜線対象になる可能性はあります。
□構造:純ラーメン程度 ・免震+杭基礎は準備必要
□設備:空調は全館単一ダクト方式・各階単一ダクト方式・個別空調のいずれか。EVは2基、防災対応必須
□省エネ・再エネ:ZEB参照
学習攻略ポイント
出題されるであろう「庁舎」の雛形
上記分析に基づき、製図試験というA2用紙に6時間30分で表現可能な「庁舎」という課題は、新館or別館を含め、いくつかの雛形に類型化できます。また雛形は、立地と部門構成から大きく影響を受けます。これらを押さえることで、大きなブレは起こらなくなります。
「庁舎」の空間構成
「庁舎」の空間構成要素は限定されており、住民サービス部門・執務部門(総務・政策・福祉・建設・危機管理)・議会部門・共用その他部門などです。その部門構成を理解すれば、大体どのあたりを問題としてくるのかはある程度予想が可能です。
人の(住民・職員・議員等)動線と要求室
空間構成を考えるうえで、利用者の動線とその機能を充足させるための要求室を考えることは、建築設計の基本中の基本です。コミュニティセンターでは利用者・管理者でしたが、庁舎では住民・職員・議員等の視点で動線と要求室を考えていくことが必要です。
執務部門を含む庁舎建築パーツ
庁舎建築は比較的パーツ化しやすく、それほど多いプラン選択はありません。そのあたりの基本を固めておけば、突拍子もないプランにはならないでしょう。
待合スペースや執務室のレイアウト関連については出題されることが確定なので、どんな要求でもレイアウトで手が止まらないようにパーツをストックしておくことが重要です。
「庁舎」に関わる要点
「庁舎」の要点については、国土交通省が指針を出していますので、それを基礎として、要点を構築していけば問題ないかと思われます。
予想問題
これらの分析から、7月25日18時の段階で予想される問題を本日中にアップします。予想屋ではありませんが、この方向性に出題可能性を感じています。
ただファーストインプレッションですから、そういう感じなのかなぁくらいでご覧いただければと思います。
A:オーソドックスに新館建て替え
オーソドックスな新館建て替え出題です。1階が住民サービス、基準階が執務空間、そして2階に子育て機能もしくはそれに類する類、もしくは最上階に議会機能、です。この場合、オーソドックスなだけに道路斜線や北側斜線、建ぺい率や容積率で難しい出題になると思われます。
B:複合機能を持たせた別館新築
既に本館が横にあり、新たな機能集約をするための別館新築です。議会機能は本館にあり、別館に設ける必要が必要がないため、3階3層分いろんなことに利用可能です。子育て支援+図書館分室+小ホール+一部行政機能あたりまで可能で何でもあり、となります。
以上、7月25日16時「庁舎」についての課題分析でした。
製図試験com代表 山口 達也