基準階型と公共施設型、攻略の順番と優先順位
一級建築士設計製図試験の合格を目指すあなたへ、今回は試験を突破する上で、なぜ製図試験comが前半戦にコミュニティセンターしかやらないのか、その「学習の順番と優先順位」に着目したお話をお届けします。
多くの受験生が直面する疑問のひとつに「どの課題から練習すればいいのか?」というものがあります。
製図試験comでは、製図課題を大きく2つの型に分けています。
それが「基準階型」と「公共施設型」です。JAEICはこのタイプ分析がよほど嫌なのか、R06本試験課題「大学」ではそれすらも崩そうとした姑息な出題をしてきましたが、第三の型があるわけではありません。
そして結論から申し上げると、最初に取り組むべきは「公共施設型」です。
基準階型は“暗記”、公共施設型は“理解”
基準階型とは、いわゆる集合住宅や事務所ビル、宿泊施設、高齢者施設などの“反復階”をもつ課題のことを指します。これらは「基準階パターン」をひとたび習得すれば、上階・下階にもある程度展開できるため、短期間での習熟が可能です。
一方で、公共施設型(例えばコミュニティセンターや図書館など)は、各室の配置が一つひとつ違い、基準階という“王様”が存在しません。だからこそ、空間構成やゾーニングのロジックをきちんと理解しないと計画できません。つまり公共施設型こそが“建築計画力”そのものを問われる課題だと言えるでしょう。
なぜ「公共施設型」から始めるべきなのか?
基準階型は、演習していないと、解法も不明な解きにくい課題のようにみえます。しかし本試験が「基準階」で発表されてしまえば、試験日のその日までずっとその「基準階」課題ばかりを解くことになります。
結果、基準階はできて当たり前、基準階が合否の差にならない、ということになってしまうわけです。
ではその時の合否の差はどこで着くのか。それは基準階以外の部分=1-2階の建築計画=公共施設型の1-2階部分ということになります。
つまり公共施設型の理解が合格への基礎なのです。その理由は、以下の3つです。
- ロジックがわかれば応用が利く:公共施設型で培った「動線計画」や「ゾーニング」の考え方は、基準階型の1-2階そのものです。
- 「図」がブレない:建築計画とは、実は“図”(主)と“地”(従)の関係性をつくる作業です。基準階型は、一見“図”っぽいのですが、合否を考えると公共施設型の部分が“図”なのです。
- 建築計画の基本:公共施設型では、出題者の意図を読もうとする姿勢、敷地の読解、ボリューム算定、動線、ゾーニング、コア計画、プランニングといった建築計画の基本を学ぶことができます。
建築は論理。だから“理解”が重要
製図試験だけでなく、建築設計は、論理的整合性=論理の積み重ねです。感覚だけで描いたり、単なるセオリーで攻めていては、その点が責められるとひとたまりもありません。だからこそ、公共施設型を通じて「なぜこのアプローチなのか」とか「なぜこの配置なのか」と問う練習がとても大切です。
単に覚えることと、理解することの違いが学習の深度の差異につながっています。
言い換えるならば、公共施設型は“論理のトレーニングジム”。どんな課題が来ても焦らず対応できるよう、日々、基礎を鍛錬しているわけです。
合格のための基礎
短期間の受験勉強においては、「何をどの順番で学ぶか」が重要です。多くの資格学校では前半戦に基準階型の多くを行いますが、やった感のみで、どの基準階も深堀りできないままとなってしまうケースが多い。だって出題されないかもしれない基準階型を覚える意味がありませんからね。
逆に非基準階部分としての公共施設型に取り組み、空間構成力を高めておけば、一見”図”に見える基準階が、最終的には”地”と見えてくるはずです。
製図試験comが7月まで、あえて「コミュニティセンター」に絞っている理由も、まさにこの戦略にあり、合格から逆算するアプローチなのです。
図と地の関係を理解し、建築空間の意味を問える力こそ、合格のための基礎と言えるではないでしょうか。