山口@製図試験 com です。
解答例を全部まとめたところで本試験を総評します。解答例CG動画はこちら
■試験概観
□貸事務所ビル+レストラン・コミュニティホール
シェアオフィスが最上階に計画することとなっており、残りは全部 1 階。よく考えると非常に構成はシンプルでした。またシェアオフィスが最上階に来ることから、特に厳しいセキュリティも要求されていない普通の貸事務所ビルが出題されました。
□南北道路北側住宅
敷地は南北道路で同じ 10m 歩道付。ただし北側道路の先には集合住宅があり、向けていいものなのかどうかは、判断迷うところでしたね。10m 道路もあることで緩衝距離としては十分という考え方とともにわざわざ向けなければできないのか?という点も多いかと思われます。東は防災上有効な公園に面していますので延焼ラインはなしですが、意外に東側公園敷地からの延焼ラインの緩和を忘れていた方が多いようです。
□面積は容積率上限まで
R03 のこの出題形式が初出でしたが、定番化していくかもしれません。90%/500%=考えなくてよいという出題となっています。それよりも驚いたのは屋外階段が禁止になっていることです。面積除外 4 項目に入っていないことから不思議に思って読解していましたが、(3)要求室下欄に「直通階段は屋内にも設けること」とありました。
□杭基礎
ようやく初出ですね。資料を付けてきた甲斐がありましたが、一度くらい課題としてやればよかったと思っています。一応 20m までの柱状改良も世の中にはあるようです。
□多かった要求図書項目
文章力読解テストの感すらある製図試験ですが、いよいよもって長い要求図書項目でした。初出がいくつかありましたが、皆さんどのくらいわかったでしょうか。 ・最小後退距離・要点での断面位置、シェアオフィスの案内プラン ・塔屋を除く建築物の高さ、道路斜線計算 □刷新された計画の要点 計画の要点ですが、問題の切り口がちょっと変わりましたね。恐らくマンネリ化してきたので全面改訂に近いと感じました。制度やフォーマットを変更することで時間稼ぎと目くらましをかけるのは試験の常套手段ですが、かなり気持ち悪い出題となっていました。
□細かい要求の多い特記事項
貸事務室 2,800mm 以上、30 人以上、特記 7 点もあるシェアオフィス、オフィスビルの開店時間とレストランの開店時間がずれる設定、レストランの造作の多さ
■合否のポイントとなる点
□階数と基準階面積
階数が自由だったことで戸惑った方が多かったのではないかと思われますが、基準階3000m2というと、次の表を作る発想はなかったでしょうか。ここでこれまでやってきたパーツが活きてくるわけです。 私なら迷わず 600m2 ならなんでもできますから 7 階建てを選択します。また 600m2 であれば、最上階の 500+100m2 もクリアできそうです。
□道路斜線とセットバックの関係
事前にスタディとしてこの数字のイメージがあるかは大きかったと思われます。
□時間利用
貸事務所ビル自体が 8-20 時。レストランのみ 7 時―21 時。この部分をどうコントロールしているのかは数少ない建築計画ポイントとなります。
■結局は基本
まず法規。道路斜線、○特、延焼ラインの○防あたりは必須でしょう。 次に要求室や要求図書が多かったので、ここでのアルナシで大きく差がつくでしょう。 屋外階段をつけたり、無柱を忘れたり、要求室を飛ばしたりです。 さらに数字ミス。○○m2 以上、○○m 以上なのに±10%で計画していては、そもそも土俵にたてません。恐らくここまでで本年度課題は半分以下になると思われます。 ただしそこから復活組もあり、合否ラインのその詳細は全くわかりません。 現時点で私からは、とにかく再現図面を描くこと。描き残しておくこと。これに尽きます。 再現図に始まり再現図に終わりましょう。再現図だけが次を開く扉となっています。(2022年度の受付は終了しています)
2022 年 10 月 10 日
製図試験 com 代表 山口 達也