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2022再現図最終分析-本試験俯瞰

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再現図に観る本試験分析

令和4年度設計製図試験課題「オフィスビル」の再現図と合否関係から本試験分析を試みたいと思います。最初にこの分析の前提条件として、

 1)サンプリングは52枚ほどの図面
 2)製図試験comの受講生及び再現図添削に送っていただいている方
 3)どこまで再現されているかも定かではない

というフィルターがかかっています。ですから全体像をつかんでいないかもしれません。ただ今年の受験生に対して、少なくとも使っていただける知見をまとめられたら、という一点でキーを叩いています。

製図試験comとしての本試験のポイント

私は、試験後、今回の試験作成サイド側の思惑(プロット)を以下の9点として読みました。

1)面積も階指定もない出題 → ボリュームチェックできるかどうか
2)南北同じ道路幅 → 敷地の方向性の優先順位がつけられるか
3)セットバック・道路斜線・天井高さ指定・階段段数 → 高さ方向の情報コントロールができるか
4)PC梁と無柱空間と天井高さ・陸立ち柱 → PC梁を理解して計画できるのか
5)杭基礎 → どこまで理解をしているのか
6)造作什器レイアウト → 時間コントロールできるのか
  7)*屋外テラスの位置
  8)*事務所レイアウトそのもの
  9)*時間管理動線表現

1)面積も階指定もない出題 → ボリュームチェックできるかどうか

1)本試験では、R03に引き続き面積が指定されていない出題に加えて、階数も無指定での出題となりました。ここでボリュームチェックができるのかできないのかで、時間的には大きな差が出ています。手順としては、
①基準階フロアを決める、②階高さを決める、③セットバック距離を逆算して、④想定したボリュームで斜線が当たらないか検討する。これを6階もしくは7階、もしくは両方で検討するということなのですが、決めないままパラメーターで単に持ち続けているとコントロールできなくなり破綻してしまったのではないかと思われます。

2)南北同じ道路幅 → 敷地の方向性の優先順位がつけられるか

これは意外に採点ウエイトが大きかったと考えられます。北入りアプローチを採用している答案の合格率は相当低かったのではないかと思われます。南側がメインで北側がサブ、というイメージなのですが、北入りにしている答案=敷地が読めていないという判断をされた可能性があると思われます。
気になるのは、そこまでアプローチで減点するくらいなら、貸事務室も本来、北側には向けないべきであり、それで失格にしていない模様。ただ合格の多くは片側コアだったことを考えると、基準階や屋上庭園を北側住宅側に向けた答案はそれなりに大きな減点となっているとは考えられます。

3)セットバック・道路斜線・天井高さ指定・階段段数 → 高さ方向のコントロール

ここはかなり練って作られていると感じました。それだけにセットバック距離なしとか、道路斜線計算間違いとか、天井高さが取れてないとか、階段段数がごまかしているあたりは、大きく減点されているのではないかと思われます。
階高さ4000で天井高さ最低2800の要求。PCで16mとすると1100-1200の梁せいが必要、床をフリーアクセスで100上げると本当にギリギリ。PC梁アラワシになってしまいます。本当は階高さ4mでPC16m以上は不合格にしたかったのではないかと思われるんですが、かならずしもそうなっていないのがこの試験の採点があやふやな部分です。

4)PC梁と無柱空間と天井高さ・陸立ち柱 → PC梁を理解して計画できるのか

建築物外壁部分にPC梁を計画するのは、あまり合理性がないのですが、やってやれないことはないです。ですが本試験ではそこを巡って、明暗が分かれました。外壁にPCを使いたくないということで、①PC梁の上に陸立ち柱にする、②貸事務室に柱を計画するという答案にわかれましたが、①は全て不合格、②は不合格にはなっていない、結果となりました。
実務では、陸立ち柱はやってやれないことはないのですが、合理性に欠けるという一点において、不合格にするのは厳しいかと感じていますが、これぞローカルルールなのだとも思います。

5)杭基礎 → どこまで理解をしているのか

杭基礎は、当然ですが、直接基礎と併用することは原則ありませんし、また20mの深さを地盤改良することもないのですが、このあたりは減点で済んでいます。ないんだけど、それなりに考えたということでしょうか。この採点は甘いかとも思いました。一方、地中梁を描いてない答案や、何を描いているのかよくわからない答案は大きく減点されたと思われます。
やはり原則は、わかっているというアピールが必要である試験だと改めて感じました。

6)造作什器レイアウト → 時間コントロールできるのか

造作物が多く、室内レイアウトに時間がかかる試験でしたが、どの時点でそれを見極めたのかは、非常に合否を分けたと思われます。早い方は読解の段階で、次に早い方はエスキースの段階で、これは作図に時間がかかるぞと感じておられます。
一方作図し始めてから、作図量多いな-と思った方はかなり危ない状態であったと思われます。

7)8)9)については、結構団子状で優劣がつけ難く、あまり合否には大きく関係しなかったように思われます。

合否俯瞰

ランク1 最高点が86点、最低点が72点 平均80.7点
ランク2 最高点が79点、最低点が62点 平均72.0点
ランク3 最高点が90点、最低点が34点 平均66.9点
ランク4 最高点が79点、最低点が36点 平均59.8点

となりました。ほぼ点数順となっていますが、ここまできれいに出ることは少ないんです。それほど「アルナシ法規」になっていると改めて感じました。
「減点が少なかった方が合格し、失格項目を踏んでいる方と減点が多かった方が不合格になっている」という結果になっています。そのうえで、下図を参照してください。違和感のあるポイントについては、ベージュ色で、不合格要因については黄色でマーキングしました。特に72点以上取られていて、なおかつ不合格だった方は納得がいかないでしょう。その裏付け取りに時間がかかりました。
各図面の解説については、再現図図面を提出し合否連絡していただいた方に後日動画配信アドレスをメールにてお知らせします。また添削性サイトBANDではアップする予定です。もうしばらくお待ち下さい。

合否の分かれ道は試験作成サイドの胸先三寸。

アルナシ・法規アウトは合否判断以前なのですが、減点はそれなりに小さく、抜けは少なく、かつ法規もクリアしているにも関わらず不合格であった答案については、試験作成サイドのプロットに抵触していることが原因だと考えられます。
アルナシ・法規ではなく、試験作成サイドが合否ラインとして想定したプロット自体は、どのようにウエイトがあるのか、評価軸となるのか、について今回のように再現図を分析してみないと全くわかりません。
試験前にはいろんな予測をしますが、その重経については、試験当日はおろか合否が出るまで、誰にもわからないというのが正直なところです。

戦い方の基本

戦い方の基本としては、できうる限り、バランスよく、とにかく疑わしきものを踏まないように計画する、という感覚が必要になります。
そんなロシアンルーレットでの合格をつかむためには、残念ながら一定の運と、そこに対する開き直りと、それに負けないメンタルが少しだけ最後に必要になるかと思います。

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